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月見草(14年9月)

私が小学生の頃、祖父母とともに過ごした家には縁側があった。
8畳の和室の前にあった縁側は、
幅90センチ長さ5メートル程であったろうか?
日頃は父が藤椅子に座って寛いでいた。
叔父達が来ると格好の酒盛り場になってビール瓶が並んでいた。
もちろん私たち姉妹も空いているときは、
お手玉、おはじき、ビー玉をして良く遊んだものだった。

 

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本当の月見草

 

そんな縁側の靴脱ぎ石の上に、
ある日月見草の鉢が置かれていた。
暗くなってから開花する月見草を見ようと
子供たちが集まってその瞬間を待った。
夕闇が迫る7時頃、月見草は朝顔のような
紡錘状の蕾を開き始めた。
まるで動画の早送りを見るように、
パサッパサッと音がしたのではないかと思える程に、
肉眼で刻々に花びらが開いていく様子が観察できるのである。
表現の派手な母がいろいろ言いながら騒いでいたが、
私は静かに月見草の不思議な開花に息をのんだ。
辺りはいつの間にか月あかりに変わっていた。

 

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日本画家 堀文子 画文集より

 

野原で月見草の群生の開花に出会った上記日本画家は、
「草が揺れる気配がして黄色い形が動いた。
包が割れ、縛られた身をふりほどくようにして花びらが伸び、
やがてバネ仕掛けのように開花する。
野原は灯をともしたように明るく変わっていった。」と表現している。

花は直径5センチあるかないかの小ぶりで、調べて見るとオオマツヨイ草のことを
間違って月見草と呼んでいたそうだ。本当の月見草はまた別のものらしい。
しかし私にとっての月見草はこの黄色いオオマツヨイ草なのである。
その後月見草とは出会う機会がないまま過ごしていたが、
月見草の名前を聞くと、遠い子供の頃の情景が思い出されて懐かしくなる。

 

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