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藤(14年5月)

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「大町藤公園」
Photo: Junko Kato

 

 

藤のようにしだれ咲く花はいろいろあるが、
しだれ梅は春のおとずれを告げるように小さな花が香りとともにそっと咲き、
しだれ桜は春爛漫の陽気の中で明るく華やかに咲くのに対して、
藤はその薄紫や白色としだれ具合が
どこか寂しげで憂いを含んでいるように見える。

数年前に、兵庫県朝来市大町藤公園を訪ねたことがあった。
幅4m、全長500mの藤棚は、長さ1.5mの房がだんだん細くなって垂れ下がり、
奥深く重なり合う薄紫の濃淡は風に揺れて
オーロラのように光が変化する幽玄の世界を醸し出していた。

子供の頃に習った日本舞踊の「藤娘」では、
枝の先についた藤の房の小道具を持って無邪気に踊っていたが、
唄われている内容は、藤の精となった娘がだんだん大人になってゆく時の色香と、
意のままにならない男心を嘆く女心を表していることを後に知った。
そこでは藤の個性と人の心情が舞台全体に表現されているようで興味深い。

藤の花は丈夫で手間がかからず、これほど育てやすい花はないと言われている。
最近は住宅で育てているのをあまり見かけなくなった気がするが、
近くの公園では規模は小さいながらもすでに花が咲いていた。
薄紫の藤の花は寂しそうながら爽やかなこの季節にふさわしい。

 

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