ミモザ(14年3月)

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風はまだ冷たいながら、ようやく明るくなってきた日差しを浴びて
ロウ梅、黄梅、レンギョウサンシュユが、
春を先取りするようにそっと咲き始めた。
早春の花木はなぜか黄色が多い。
その中で、ミモザの黄色い存在感は圧巻だ。

私の家から駅へ通じる道の途中にある1本のミモザの木は、
毎年3月になるとふわふわとした羽状の花が
屋根より大きい大木を覆い尽くし、遠くからでも目につく明るい黄色の固まりは、
少し緩み始めた寒気の中で一気に春の到来を感じさせてくれる。

大木になって私たちが良く目にするのはギンヨウアカシア。
通称フランス語でミモザと呼ばれ、ミモザサラダの由来ともなっている。
ギザギザの切れ込みの多い葉っぱは銀灰色で、花の色とのコントラストが見事だ。
小さな丸い固まりは無数の花で出来ていて、
それが集まった何千何万の花が羽状の房となっている。
花はそれぞれに目的があって色と形が出来ているというが、
いつも人知の及ばない造形の美しさに目を奪われる。

ミモザの故郷南フランスでは、
ポルム・レ・ミモザ村からグラースへ通じる130kmの
ミモザ街道」が黄金色に染まり、
小さな街ではミモザ祭りが開かれるという。
コートダジュール地方のマンドリューと
ラ・ナプルではミモザの花で飾られた山車の上に乗った
ミス・ミモザや入賞者たちが、花を投げ合うパレードで賑わうそうだ。
地中海の紺碧の空や海に生える黄色いミモザは、
日本の桜のようにその国の風景と心情にとけ込み
春を告げる花として人々に愛されているのだろう。

私は毎年近くにあるミモザの木を見て、
自宅でも植えてみたいと思いながらもう何年も経ってしまった。
玄関前のシンボルツリーはヤマボウシ
南側の小さな庭にはもう植えるスペースがない。
せめて鉢植えにでもして、
あの丸い黄色い固まりと銀灰色の葉を近くで眺めてみよう。

 

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